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2019年7月 1日「大崎事件」最高裁決定に対する抗議声明

「大崎事件」最高裁決定に対する抗議声明

 

最高裁第一小法廷は、大崎事件の原口アヤ子さんの再審請求を2019625日付で棄却した。鹿児島地裁と福岡高裁宮崎支部の再審開始を取り消して、さらに高裁に差し戻さずに自ら再審請求を棄却した。

えん罪救済センターは、本決定に強く抗議する。

原口さんは40年の間、いっかんして無実を訴えてきた。捜査段階から否認を貫き、懲役10年を言い渡されたが、出所後も冤罪を晴らすために闘いつづけた。すでに92歳という高齢である。

第一次再審請求では地裁が再審開始を決定したが、検察官の即時抗告のすえ取り消された。第二次請求は容れられず、第三次の請求をした。

弁護団は第三次請求において、心理学と法医学の科学鑑定を新証拠として提出した。これを受けて地裁では、鑑定を行った証人への尋問など丁寧な審理が行われた。これらの証拠などから確定判決の有罪認定に合理的な疑いがあるとして、地裁は再審開始を決定し、高裁も地裁の結論を維持した。

 本決定は、検察官の特別抗告に理由がないとしつつも、職権で調査をした上で、地裁・高裁の再審開始決定には違法があり、取り消さなければ「著しく正義に反する」と判断したのである。そして、新証拠は無罪を言い渡すべき明らかな証拠にあたらないとして、再審請求を棄却した。

高裁決定から本決定にいたるまでに1年余りが経過していたが、最高裁は弁護人の意見を聞く機会を設けたことすら一度もなかった。法律審たる最高裁が高裁に差し戻すこともなく、書面審理のみで請求人に有利な判断を自ら取り消すということには、手続保障の観点から重大な問題がある。

本決定の内容にも疑問がある。たとえば、確定判決の主な根拠は、原口さんの親族らの自白や供述であった。しかし、親族らには知的障がい・精神障がいがあり、自白には重大な変遷があった。捜査員らの誘導による虚偽供述の可能性があることは、これまでもたびたび指摘されてきた。それにもかかわらず、本決定は、自白や供述が相互に支え合っているだけでなく、証拠から認められる客観的状況にも支えられ、「信用性は相応に強固である」と確定判決の認定を受け容れた。

供述弱者たる親族らの自白や供述の信用性を無批判に受け入れたかのような判断は、最近の科学的手法にもとづく供述心理分析などの心理学的知見からも支持されない。このような決定に裁判官の全員一致でいたったことに、愕然とする。

再審制度は、誤って有罪を言い渡されてしまった無辜の救済のためにある。1975年の白鳥決定は「疑わしいときは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則が再審請求段階にも適用されると判示した。本決定は白鳥決定の精神とは相容れない。本決定のような判断が許されるならば、日本の刑事司法にはもはや実効的に機能する事後的なえん罪救済のシステムが存在しないということにもなりかねない。

 私たちは本決定に強く抗議するとともに、公正・公平な司法を実現し、えん罪被害者の救済のためにさらに活動を強化していくことを表明する。

 

201971

えん罪救済センター

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